いそひと

インタビュー

シャムロック・レコード株式会社/代表取締役 青木さん×いそひと大手町/責任者 戸田

シャムロック・レコード株式会社/代表取締役 青木さん×いそひと大手町/責任者 戸田

健聴者と、聴覚障がい者をつなぐコミュニケーションアプリ「UDトーク」。
アプリ開発者であるシャムロック・レコード株式会社の代表取締役・青木秀仁さんに、
アプリ導入がもたらす可能性について聞きました。

「話したいことを伝えるために、何かを作らないといけないな、と思いました」(青木)

「話したいことを伝えるために、何かを作らないといけないな、と思いました」

まず、会社名をみて、シャムロック・レコードってCDのレーベル会社みたいだな、って思った方も多いと思います。実はその通りで、私が音楽をやっていたころのインディーズ・レーベルの名前なんです。CDも4枚出しています(笑)。
当時は音楽活動だけでは食べていけなくて、フリーランスのプログラマもやっていました。バンドを解散したのが2011年なのですが、同時期に東日本大震災があり、社会貢献を考え始めました。でも、音楽で社会貢献というのがイマイチ考え付かなかったんです。そこで、プログラマで食べていこうと思いまして、その年の6月に起業しました。ちょうどスマートフォンの開発などが流行ってきた時期でして、自分でもアプリを作ってみたいな、と思っていました。しかしその当時は聴覚障がいやユニバーサルデザインなどは全く頭になかったですね。

まったく普通のアプリケーション開発会社だったんですね。それがなぜ、UDトークのようなアプリをつくることになったのですか?

はい。フリーランス時代は音声認識の開発をしている会社の仕事をしていたのですが、ある日、音声認識技術とスマートデバイスの組み合わせの可能性について話を聞きたいという、障がい者の市民団体があったんです。そこで私が講演をすることになったのですが、それが人生が変わったきっかけです。
講演では音声認識やスマートデバイスの話をしたのですが、せっかく私の話を聞きに来てくれた視覚や聴覚に障がいのある人たちに、本当に話が伝わらない(笑)。「ここ」や「そこ」といった抽象的な表現だと視覚障がいの方に、逆に細かく説明すると今度は聴覚障がいの方に伝わらない。これは、やり方自体を変えるために何か作らないといけないな、と思ったんです。

「IT技術を使うことで“生きにくい”と感じていた人が、生きやすくなる可能性がある」(戸田)

「IT技術を使うことで“生きにくい”と感じていた人が、生きやすくなる可能性がある」

青木さんの話を伺うと、UDトークの開発には関わるべくして関わったという感じですね。
音声認識で思い出したのですが、数年前に当社でこんなことがありました。当時、働いていた聴覚障がいのある社員向けに、朝礼の内容をシェアしようと試みたんですがなかなか上手くいかず、みんな苦労していました。その頃の音声認識の認識精度は、まだまだ実用レベルではなかった気がします。しかし今はスマホの音声認識レベルもとても高いですよね。昔は機械が認識できるように、機械に合わせた話し方をしないとダメだったのが、今は誰が話してもある程度認識しますよね。

そうですね。ここ1年で音声認識技術はかなり高まりました。詳しく話すと長くなるのですが、クラウドの発展が関係していると思います。また、UDトークは「AmiVoice」という音声認識ソフトを採用しています。AmiVoiceは10年以上前から開発されている実績あるソフトです。たまたま私がそのAmiVoiceの会社で仕事をしていた関係で、UDトークにも使用させていただいています。

音声認識も含め、テクノロジーの進歩はものすごいものがあります。それと同時に、使い方、使いこなし方も大切ですよね。UDトークは聴覚障がいのある方のためのツールですが、聴覚の衰えた高齢者が孫と会話するときに使ってもいいし、それが何の垣根もなくできる世の中というのが自然な感じがします。そういった意味では、最先端のIT技術を使うことによって“生きにくい”と感じていた人が、生きやすくなる可能性があると思うんです。
実は「いそひと」で積極的にIT機器を取り入れようと思ったのも、聴覚障がい者のためというよりも、同じ会社にいる同僚や上司など、一緒に働く人たちのためというのがあるんです。

私も当初から、聴覚障がい者のためというよりも、私がコミュニケーションをとりたいから、つまり講演した時に伝わらなかったから、伝えられるものを作ろうというのがありました。実は聴覚障がいのある方が使っている製品というのは意外と多くない。普段は補聴器など自立支援機器と言われる、限られたものです。それ以外は、健聴者が使うものです。

そうなんですよね。聴覚障がい者とのコミュニケーションとなると、健常者は機器や手話を使いこなさないといけないし、使いこなせないと、聴覚障がい者=聞こえない人となり、コミュニケーションできないとなりがちです。それがさらに溝を深める、付き合いを遠ざけてしまうという悪循環になっていますよね。
しかし、UDトークなど普段使っている音声言語を使って聴覚障がい者とコミュニケーションがとれるツールがあると分かれば、コミュニケーション向上のきっかけになると思います。ところで、UDトークの開発で苦労したところはありますか?

開発に苦労したのは操作するインターフェースです。人が誰かと会話しながら操作するのは、ワンアクション以上は難しいと思ったんです。
開発者の視点からしては、本当はもう数アクションしたいんです(笑)。いくらでもアクションは増やせるんですけど、なるべくワンアクションで、ボタンを押しやすい位置に置くというのが苦労しましたね。

「UDトークは、いそひとのスタンダードツール」(戸田)

「UDトークは、いそひとのスタンダードツール」

今後、精神障がい者の雇用が義務化されるなど、障がい者の雇用機会は多くなります。しかし企業の採用枠や体制はそこまで追いつかず、相対的な雇用数が大きくなることはないと予想されます。そういうなかで、聴覚障がいの方たちの雇用の場を広げようというのが導入意図です。
健聴者の世界で、聴覚障がいのある方が長期安定就業するために必要なことは何だろう、と考えたとき答えの一つとして出たのが、やはり聞いて話すという“聴覚口話”の世界で生きていく力をつけていくことでした。手話は健聴者と聴覚障がい者をつなぐ一つのツールですが、手話を使える人は多くない。そこで、ITを使ったコミュニケーションツールをさがしていたところ、見つけたのがUDトークです。

私としても、就労支援窓口や、NPOなどにUDトークをアプローチしていたところでした。
そんなときに声をかけていただいたんですね。まさにベストマタイミングでした(笑)。ですから、開所時に使える状態を目指してスピード感を持って進め、実際に開所時に揃えることができました。でもそれが大事だと思うんです。開所時からあると、ここではこういうツールを使うということが当たり前になりますよね。

そうですね。そのおかげでUDトークは、いそひとのスタンダードツールとなっていますし、見学に来られた方も「こんな便利なものがあったのか!」と驚かれます。
UDトークを通じて私が思うのは、「手話や特別なスキルがなくても、こういったツールを使えばコミュニケーションをとれるんだ」ということですね。

実は私は、手話を覚えました。最初はUDトークを使ってコミュニケーションしていたのですが、手話を覚えるとコミュニケーションの選択肢の一つに手話が加わるんです。難しいことはUDトークを使い、簡単なコミュニケーションは手話を使うなど、それぞれの良いところを使っていけるようになりました。そういう点では、聴覚障がい者とのコミュニケーションの初めのハードルを越えるポイントでUDトークを使うのも良いと思います。

「UDトークを当たり前に使っている世代が社会を変えていくと思います」(青木)

「UDトークを当たり前に使っている世代が社会を変えていくと思います」

個々の状況によって違いますが、障がいに関わらず、障がいのある方は自分の権利は自分で主張する力、「自己擁護力」というのが必要になると思います。同時にメンタルタフネスなども要求されると思いますがどう思いますか?

私は、当事者(障がい者)がもっと要求していいと思うんです。権利を訴える人は多いですが、行動を起こす人ってほとんどいないと思うんですね。筆談をお願いして嫌がる人ってあまりいないと思うんです。だから「筆談で」と要求すればいいんですよね。
当事者が「こういうツールがあるから使ってください。そうすれば、コミュニケーションが取れる」と言ってもらうことが大事だと思います。

会社でも、「こういうツールを使って参加させてくれれば、こういう貢献ができる」ということを当事者が言えれば、会社としてもそれならば検討しようという動きが出るかもしれないですね。情報保障も同じかもしれませんね。情報保障は、「保障してほしい」という受け身の姿勢です。しかし、ツールを使って発信する側になる、ということが可能になると、前向きな議論ができると思うんです。UDトークも同じですよね。UDトークを使えば同じレベルでコミュニケーションが取れる、と。

会社以外にも今後は、大学での導入も進めていきたいです。大学の授業では聴覚障がいのある学生のために、学生ボランティアがノートテイクをしています。そのようなところでもUDトークの利用が広がると良いと思うんです。

ノートテイクと言えば、大学の講義で聴覚障がいの学生は、講義終了後、先生ではなくノートテイクをしてくれたボランティアの方に感謝するそうです。もちろん、ボランティアの方への感謝は大切なのですが、講義をした先生は忘れ去られている(笑)。でも、これからはUDトークを使って講義を提供できれば、聴覚障がいの学生と先生とのコミュニケーションが生まれるかもしれません。他にも、例えば、採用面接の際に応募者がUDトークを持参し、「これでコミュニケーションをお願いします」と言っても良いし、もしかしたら面接官がUDトークをすでに使っている場面があるかもしれませんね。

それと、今後は若い人に使ってほしいです。こういうのを当たり前に使っている世代が社会に出ていくことが、社会を変えていくきっかけになると思います。
実は実験段階なのですが、ウェアラブル端末への搭載も進めています。UDトークで認識した人の声を拾って、それをグラスに表示させるんです。作ってみるとメガネのディスプレイで見るのはまだ見にくかったりしますが、可能性はあります。UDトーク自体もたくさん改善要望をいただいていますし、これからも進化させていきます。
コミュニケーションアプリやツールはこれからますますニーズも出てくるし、形式も変わってくるはずです。私も1年後、何がスタンダードになっているか分かりません。常にアンテナを張って、新しいコミュニケーションツールを作っていければ良いと思います。

夢の話かもしれませんが、メガネをかければ誰とでもコミュニケーションが取れる時代が来るかもしれません。技術は日進月歩ですから、これから音声認識もますます注目ですね。
これからも最先端の技術で私たちに驚きを提供していただければと思います。
本日はありがとうございました。

UDトーク

UDトークはコミュニケーションの「UD=ユニバーサルデザイン」を支援するためのアプリです。

1対1の会話から多人数のミーティング・会議まで、使い方次第で幅広く様々な方とのコミュニケーションに活用することができます。

> UDトークのダウンロードはこちらから

まずは、お気軽に
お問い合わせください

見学予約・お問い合わせ

  • FAX 03-3518-2923
  • TEL 03-3518-2921
  • TEL 03-3518-2921

お問い合わせ 9:00〜18:00(月〜金)